COLUMN
ご相談事例
[相談事例]親が怖くて逆らえません。
FROM:親子関係カウンセラー川島崇照
※公開可能な事例を紹介します。
後継ぎがツラい!奴隷化してしまう家族経営のパターン
地方部に多いのが「後継ぎ問題」です。
子ども(特に長女、長男)は家業を継がなければならないという考え方がいまでも根強く残っています。
ご相談いただくなかで多くのケースでは、学校を卒業して都市部に就職するが30歳前後になると「家に戻ってこい」と言われます。
親の言うことに逆らえずしょうがなく後を継ぐというのが多くのパターンです。
親はだいたい50代から60代です。
父親が社長、母親が専務というふうに家族経営の個人商店や従業員もほんの数人の小規模経営がほとんどです。
親はまだまだ元気なのですが、
自分たちの「引退」を考えると早めに後を継がせたいという気持ちがあるようです。
しかし、、、
ご相談いただいたケースでは、親がにそうすんなりとあとを継がせることはありませんでした。
名目上は「後継ぎ」だけど、それはまさに「奴隷」
ある男性の例は、親が経営者、従業員はご相談者本人を含めて3人の小規模経営をしているご実家でのことです。
親と一緒に働くようになり10年が経とうとしていました。
10年しても与えられる仕事は商品の配送業務です。
お客様とコミュニケーションする仕事なのでそれも大切なことなのですが、
後継者として家業に入ったのに一向に経営のことは教えてもらえません。
それどころか、、、
会社がどのくらい売り上げているのかさえも秘密にされれて教えてもらえません。
日々の仕事に裁量権はなく、常に親にお伺いをたてなければならず、非常に非効率的な職場だったのです。
経営者である父や母は忙しそうにしていますが、経営のことはすべてが “秘密” なので、実際に何をしているのかさえわかりませんでした。
カウンセリングを受けていた当時、ご相談者は、
「親は誰のことも信用できなかったのではないか、、、」と言っていました。
重要な仕事を誰にも渡せず、全て自分たちで抱え込み、秘密にし、
そのことでストレスを感じては『お前なんかにできるはずがないからオレたちがしょうがなくやっているんだ』と怒鳴り散らしていたそうです。
とにかく、いつまでも親が君臨し、子どもは頭があがりません。
さらに、、、給料が異常に低いのです。
どのくらい低いかというと、、、月額7万円でした。
(ちなみに同じようなご相談のケースで今までにいちばん低かったのは「1万円」です。)
こういったことはよくあることで、
地方部で家族経営をしていて、そこで働いている後継者は非常に安い給料で働いていることが多いのです。
親にとっては人件費のかからない都合のいい使用人だったのかもしれません。
名目上は「後継ぎ」ですが、それはまさに「奴隷」のようなものです。
何歳になっても親が怖い
例に漏れず、この方も幼少から心を傷つけられてきました。
父親から褒めてもらった記憶がありません。
いつも努力が足りないと言われ続けてきました。
母親は姑との確執から、いつもストレスを抱えていました。
怒りの爆発や罵倒があり、母親の顔色を伺って、毎日がサバイバルだったということです。
ご相談者は37歳です。しかし「親が怖くてたまらない」と言います。
幼少期から親に感じていた恐怖心をそのまま持ち続けて成長したご相談者は、何歳になっても親を怖く感じてしまうのです。
怖いのですから親に対して自分の気持ちを言うということはできません。
親が言うことは絶対でそれにずっと従ってきたのです。
親子関係のメンタルトレーニング「親に宣言する」
そこで私が実際に伝えたアドバイスは、、、「親に宣言しましょう」です。
これまでは恐怖で自分の気持ちを言えませんでした。
しかし、我慢して何も言わないことは「どうぞもっとやってください」と言っているのと同じです。
だから親はいつまでも「仕事があるだけいいだろ」と気持ちを押し付けてきます。
はっきりと「こんな給料じゃやっていけない!」と言わなければいつまでも支配は続きます。
そこでご相談者と私が一緒に考えた言葉がこれです。
●今の生活ではじぶんは生きているとは言えない。死なない程度に生かされているだけだ
●来月までに◯◯万円の給料にして欲しい
●聞き入れてもらえないのであればじぶんは仕事を辞めて自分の力だけで生きていく
このように、自分の気持ちをストレートに伝える宣言文をつくりました。
そしてご相談者はこの宣言文をもとに手紙を書き、親のこれまで言えなかった気持ちを開示したのです。
この宣言を聞いた親はなんと言ったでしょう、、、
『できるもんならやってみろ』
『おまえに自立なんてできるわけがない』
『家を出て行くなら縁を切る』
結局、それでも親は脅しと否定で攻撃してきました。
彼は勇気をふりしぼって自分の気持ちを伝えましたが親は受け入れませんでした。
そんな親の姿を見た彼は、人を奴隷のように扱う様子に『離れる覚悟ができた』と感じたそうです。
彼はじぶんの気持ちに向き合い、宣言したことで、本当はどうしたいのかに気づいたのです。
そして、なにをしても親は変わらないということを知ったことで、
親との間に心の境界線を引きました。
彼は『怖い親』を乗り越えたのです。
気持ちを宣言することは、
親を変えるためにするのではありません。
心のなかで感じている親への恐怖心や罪悪感を乗り越えるためにあるのです。
彼はそれをやってのけたということです。
現在のご相談者はどうなったか?
現在は親から離れて自分の力で生きています。
いまでは独立開業し、ご結婚もされ、奥さまと2人のお子さんと4人家族で幸せに暮らされています。
結局、親は最後まで変わりませんでした。
彼が勇気を出して真剣に伝えた気持ちを理解することはありませんでした。
親はご相談者のことをずっと非力で無知な子どもだと思い込んでいたのかもしれません。
だからこそ、重要な仕事も渡せないし、ひとりの大人として認めただけの給与も渡せなかったのかもしれません。
「あそこにいたら自分は一生親の奴隷だったと思います、、、」
「いまやっと自分は生きていると実感しています」
こんなふうに季節の折に近況報告をしてくれる彼は以前とは見違えるように明るく笑います。
ご相談者は勇気を出して自分の人生を手に入れました。
したことは、支配を受け入れていた「自分」を変えたことでした。
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