COLUMN
親が否定する 親が否定する
後継ぎとして生まれた息子たちの悩み
近年、男性からのご相談が急増しています。
ひと昔前だとカウンセリングを受ける男性は全体の10%くらいだったのですが、今は30%くらいにはなっているでしょう。
ご相談内容は、親との関わり方で悩んでいるというのが中心です。
考え方を押し付けてくる親とどう距離を保っていけばいいのかという悩みだったり、結婚を反対されているけどどうしたら認めてもらえるだろうかという悩みだったり、仕事をやめて実家に戻って家業を継げと言われていてなんとかして断りたいけど自分ではできそうにないといった悩みだったり、、、
だいたいが支配的、依存的な親との関わり方に強い不安を抱えているといった人たちばかりです。
今日は、男性からよく寄せられるお悩みについて事例を解説していきますよ。
そして、どう考えたら親と心地よい距離感を保っていけるのかについてもお伝えしたいと思っています。
親を裏切るみたいで申し訳ない
「長男なんだから」「後継ぎなんだから」と言われて、苦しい思いをしている男性というのは昔から変わらずたくさんいます。
先祖代々続く土地と家屋を守っていくのは長男の役目、何代も続いた家業を継ぐのが息子の役目などと言われ続けて、息子本人もそうすることが当たり前だと思い込んで生きてきたけど、社会人になって仕事をするようになり、恋人とも交際しながら、今の自由な生活を手放したくないけど、親をがっかりもさせたくないなんて考えて悩んでいる人はとても多いものです。
ここまで育ててきてもらったのに、親を裏切るみたいで申し訳ない、、、
好きなことをして生きるなんて自分勝手でわがままなんじゃないか、、、
親の言うとおりに生きていけば、いつかは幸せに感じられる日が来るのではないか、、、
いろいろと考えるけど、なんとなくスッキリしなくて、悩み続けて、時間ばかりが過ぎていく日々。いつかは答えを出さなければいけないと思っているのに、決められない自分が無能で意気地なしのように思えてきて情けない。
私はそんなふうに悩み苦しんできた多くの男性を見てきました。
そしていつしか押し寄せる親の支配と依存
多くの方が私のところに相談してくれるタイミングは、親からたくさん批判されるようになったあとのことです。
最初はどんな人でも「自分の親なんだから真剣に気持ちを伝えたら息子の気持ちをわかってくれるはずだ」と考えて、頑張って説明しようとするんです。
でも、「縁を切るぞ」「子どもに裏切られた」「自分勝手でわがままだ」と言われて撃沈するわけです。
そして親から言われた言葉に悩み苦しみ、自分だけではどうにも答えを出せなくて、カウンセリングを受けるというのがよくあるパターンなんです。
いろいろとお話を聞いていくと、どの方も子ども時代から親が偉くて子は従うのが当たり前という雰囲気のなかで生活してきたとか、親からたくさん勉強するように強要されていて、将来は良い学校を出て社会的に地位の高い仕事に就けと言われていたと話します。
そして、昔から親のことが怖くて、怒られないようにしなければいけないと思い込み、自分で考えて決めるということはあまりなく、とにかく親から言われていたことに従うことばかりだったということでした。
だから、大人なっても親の顔色ばかりをうかがってしまい、親が不機嫌そうな態度を見ていると、言いたいことも言えなくなってしまい、また従ってしまうことの繰り返しです。
そして、このままでは自分の人生はダメになってしまうのではないか、この先もずっと親に従い続けて奴隷のような生き方になってしまうのではないかと恐怖を感じて、カウンセリングに申し込まれたという方たちばかりでした。
息子の生き方を否定する親の心理を解説
ここで知っておいてもらいたいことがあります。
それは親が息子たちの生き方を否定するときの心理についてです。
そもそもなんで否定をするのか、どういう心理背景があって否定的なことを言うのか、本当はどんな問題が原因となっているのか、これらを知らないと正しい判断ができません。
今、あなたが親から何かを押し付けられていて、それを受け入れると自由な人生を生きられそうになく、自分でどうしていいかわからずに不安でいっぱいになっているなら、これからお伝えすることをしっかりと受け止めてください。
「子どもに裏切られた」と言う親の心理
「子どもに裏切られた」という言葉は、強い期待を子どもに押し付けていた親が使う言葉です。
劣等感が強くて自分自身に価値を感じていない親が多いです。
自分に自信が持てず、他人から悪く思われているのではないかと感じ、家の外で一生懸命に良い人を演じているというパターンもあれば、誰からも好かれないだろうから他人の顔色ばかりを気にして人間関係を作らずに孤立を選んでいるというパターンもあります。
でもそんな親でも家の中では支配的な人に変わります。
親が成し遂げられなかったことを子どもに期待して押し付けるんです。
よくあるケースでは、学校の成績や順位、レベルの高い学校への進学、名が通っている会社に就職すること、家柄がしっかりしていて高い学歴を持っている人と結婚すること、そして家業を継いで親を満足させること、、、。
ぜんぶ親の満足のために、子どもに強い期待を抱いて押し付けます。
そのためにはお金も時間も惜しまなかったりしますね。
このコラムを読んでいて共感できる部分がたくさんあると感じたあなただったら、こういった経験をたくさんしてきたのかもしれません。
でも、あなただって自分の思いどおりにしたいときだってあったはずです。
好きな分野で仕事をしてみたかったり、好きな人と結婚したかったりすると思うんですよ。
しかし、親が満足しなければ反対されてきたのかもしれんせんね。
それでも、あなたががんばって親を説得しようと思えば思うほど、親から「あなたには裏切られた」「これだけお金をかけてきてあげたのに」「どれだけ親が苦労して育ててきたのかわかっていない」と言われたりして、傷ついてきたということもあったかもしれません。
でもね、それ全部、親の劣等感から出てくる言葉です。
自分自身の価値や能力は低いと決めつけて、自分の力で頑張ってもどうせうまくいかないと思い込んだ親が、あなたを代理にして無価値無能への不安を打ち消そうとしたというパターンもあります。
逆に、自信満々な親も劣等感の強い人です。
自分のステータスは高くて社会からも認められていると思いこんでいる親が、あなたにもそうなってもらわないと親が恥ずかしいと考えています。
自分たちが息子にかけたお金や時間が無駄になりそうで不安になります。
だから、どこに出しても恥ずかしくないステータスの高い子どもに育てようとするし、絵に描いたような親思いの息子に育てて、不安を打ち消そうとしたというパターンもあります。
どちらも、あなたの価値を高めれば、自分たちの価値まで上がっていくかのように感じて、それが錯覚だとも気づけずに、満足してしまった人たちです。
そして、自分たちもそうしてきたように、子どもであるあなたも同じように親を満足させてくれるだろうと勝手に思い込んで期待を押し付けてきたから、あなたが自由に生きたいと思って独自の行動を取ろうとしたときに、親は「裏切られた」と言うんです。
「縁を切るぞ」と言う親の心理
「縁を切るぞ」と言っている親は、自己中心的で子どもの身になって考えられない、思いやりの乏しい人たちです。
もう少し突っ込んで解説すると、こういった親にとっては子どもは所有物という感覚が強く、自分の思い通りにならないのであれば「役に立たないのであれば捨てるぞ!」と言っては脅したくなります。
親は偉いのだから子どもの生き方を決めて当たり前、子どもは親に育ててもらったのだから従って当たり前、というふうに考えている親なんですね。
あなたの親はこの言葉を言っているでしょうか?
こういったタイプの親は、じつは縁を切るとはまったく思っていないことも多いです。実際に縁切りを実行する親は全体の1割くらいで、残りの9割の親はいつまでもしつこく子どもをコントロールしようとします。
もし、あなたもこの言葉を言われてきたのであればこう考えてほしいのです。
「縁を切るぞ!」とは、親がなんとかしてあなたをコントロールしたくて一生懸命に考えた結果、これを言えば恐怖を感じて、あなたが考えを変えて親に従うだろうと導き出した言葉です。
でも、よく考えてみればわかるはずです。
その言葉って、親がいちばん恐れている言葉だということがです。
親はあなたの身になって考えたのではなく、親が恐れる言葉をきっとあなたも恐れるだろうと勝手に予測してつくった言葉だから、じつはそれは親の恐怖なんですよ。
だから、縁切りを実行できない親が9割もいるんです。
ただし残念ながら1割の親は縁切りを実行します。
でも、実行するのは、もっとも心に問題を強く抱える親たちです。
自分の思い通りにならないのであれば「いらない」と考えるくらいの親ですから、実行できてしまうんです。
どちらにせよ、「縁を切るぞ!」と言っている親は、自己中心的で子どもの身になって考えられない、思いやりの乏しい人たちです。
「自分勝手でわがままだ」と言う親の心理
「自分勝手でわがままだ」という言葉は、強い依存心を抱えている親がよく使う言葉です。
こういった親は、自分の人生だから自分の力で頑張るという主体性がなく、誰かに養ってもらいたい、誰かに頼らないと生きていけはずという意識が強いです。
ここで、自分勝手やわがままという言葉の意味について考えてみましょう。
その言葉にどういった意味を付けるかは、人それぞれ違います。ここでは、健やかな親子関係ということを前提に考えてみますね。
先に結論から申し上げると、心理的には自分勝手やわがままという状態は、自分の考え方を相手に強要しているとか、自分の都合を相手に押し付けて振り回していることを指します。
さて、あなたは親に自分の考えを押し付けているでしょうか?
自分の都合を親に押し付けて振り回しているでしょうか?
私の勝手な思い込みかもしれないけど、もしかしてそれをしているのってあなたの親ではないですか?
親子と言っても、ひとりひとりの個人であり人格は別々です。
家族とは個人の集合体であり、支配していい関係性でもないし、自己犠牲を強いられる間柄でもないはずです。
でもあなたの親は協力をすることが家族の義務であり息子としての責任だなんて言っていませんか。
これな本当によく見られるケースなんですが、「自分勝手だわがままだ」と言って息子を批判している親が、じつは自分勝手だわがままなことをしていたという話なんです。
依存心が強い親は、自分の人生だから自分が頑張るとは思えません。
それよりも、自分は弱い存在で守ってもらわなければ生きていけないと決めて、当たり前のように子どもを自分の人生に組み込みます。
でも、あなただって生きたいように生きたいはずです。
好きな仕事もしたいし、好きな人と一緒に過ごしていたいはずです。
しかし親はそれを許してしまうと、あなたに依存できなくなるから反対するんです。
「こんなにもかわいそうな親を差し置いて、自分ばかり自由に生きようとするのは自分勝手だ、わがままだ」と考えてあなたを非難します。
親と距離をとるときの心構え3カ条
親が抱える問題がわかったら、今度は心地よい距離を保つための考え方を学んでいきましょう。
ただ距離をとるのでは、親に感じる罪悪感と恐怖心は少なくなりません。
大切なことは、自分を肯定して離れることです。
1.親の人生と自分の人生を分けてもいい
心が健康な親は、自分の人生と子どもの人生を分けて感がています。
主体性があり、自分の力で頑張るからたくさんの達成感を感じられて、自信を持つことができて、楽しい人生にできると考えています。
これこそが自立した生き方です。
あなたの人生も同じです。
あなたが自分のやりたいことをやっているから幸せが増えていくし、好きな人と一緒にいるから毎日楽しくも感じられるんです。
あなたが親の人生と自分の人生を分けていくことは、あなたが親から受けていた支配や依存から脱出していくということです。
そして同時に親もあなたを頼らず、自分の人生を生きていけるということでもあります。
それは、あなたも親も自立をするということ。
親自身の力で頑張って、あなたに頼らなくても幸せを見出すことができれば、それは親の人生にとっても良いことですね。
2.やりたいと思ったことだけやっていい
あなたも親も自立していくためには、あなた自身がやりたいことだけをやって、やりたくないことを減らしていく必要があります。
ちょっとショックなことかもしれませんが、大事なことなのでストレートに言いますよ。
親の問題をつくっていたのは、あなた自身かもしれません。
今までのあなたは親を怒らせてしまいそうだからやりたくないのに無理してやっていたのかもしれませんし、やりたいことも我慢してあきらめていたのかもしれず、それを見た親が自分たちの考えは間違っていなかったんだと思って自信をつけ、そしてあのように強く支配する親、依存する親をなっていった可能性が高いんです。
ようするに、あなたが自分の本心に従って行動したら、親が支配したくても依存したくても、現実それができなくなっていくよということ。
思い通りにならないから親は怒るかもしれないけど、それは悪いことではなく、あなたが自由に生きられていることの証にもなるはずです。
3.親の力を信じてもいい
もしあなたが自分が親から離れたら裏切るみたいでかわいそうだとか、弱い親が不憫な生活をするかもしれず申し訳ないと感じるなら、親にも力があると信じてみましょう。
小さい子どもは別として、この世に生きる力のない人というのは存在しません。
でも、あなたが親を見て生きる力が無いように見えるなら、それは親自身が自分に力が無いと思い込んでいて、昔から親は苦労している、親はかわいそうだ、親を見捨ててはらないという洗脳をされてきた影響かもしれません。
でもはっきり言います。
あなたの親にも生きる力はありますよ。
しかし、その力を使う練習をしていないんです。
だからうまく力を使えないんです。
ということは、あなたが力の無い親を手助けしている状態は、言い方をかえれば親をダメにしているということでもあり、いつまでも支配したがり依存したがりの状態から脱却していくことができませんね。
そうすると、あなたがこれからしなければならないのは「親に断る」ことです。
でも無下に断るのではなく、親にも力があって、その力を使いこなす練習をしてもらわなければ親自身の幸せを見出していけなくなるから、前向きに信じて断ることが大切です。
断るということは親を傷つけることにはなりません。
親の自立を願って、親が子どもに頼らずに幸せになってもらうための愛情でもあります。
男性は恐怖心が強い
これはあくまでも親子関係に限ったことになるのかもしれないのですが、男性は女性に比べて恐怖心が強いです。
女性に比べて男性は問題回避の行動が強く、怖いことが起こりそうになると問題から目を背けがちです。
そして現状維持を選んでトラブルが起こらないようにしようとします。
嫌なことだけど、自分さえが我慢していれば大きな問題は起こらないだろうと考えて、親の意見を受け入れているということです。
でも怖いのは、ある程度の年齢になってくると我慢で済まなくなるということです。
たとえば、就職するとか、結婚をするとか、家を建てるとか、どの地域で暮らすとか、人生設計が大幅に狂ったり、パートナーとの関係にヒビが入ったりするからです。
小さい子どもだったころは、我慢して従っていれば怒られなかったかもしれませんから、ある意味、自分を守れたのかもしれません。
しかし、大人になってからは自分の人生の舵取りは自分でしなければいけないはずです。
どんな仕事をするのか?誰と結婚するか?どんな生活をしていくか?
すべて自分が感じる幸福感をもとに設計していかないと、「こんなはずじゃなかったのに!」になってしまいます。
だから、男性こそ早めに助けを求めてもらいたいのです。
苦しいなら苦しいと言ってもいいし、つらいならやり方を変えてもいいはずなのに、弱音を吐けなくて、抱え込んでいる人って多いと思うんですよ。
我慢しすぎて、もはや自分の本当の気持ちがわからなくなっている男性はたくさんいます。そこまでいったら、もう自分の人生に戻ってこれなくなるかもしれません。一生、親の人生を生きる選択をしてしまうかもしれません。
そんなことにならないようにしたいですね。
あなたの人生はあなたのものですから、あなたの価値観で幸福に感じられる生き方を選びたいですね。
それが「生きている」ってい感覚ですから。
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